ヴァスタリア(世界)について
  • ヴァスタリア王国
     太古の時代、ヴァスタとリアーレという二つの国が争った末に生まれた、とされている統一国家。王都の上空にある浮遊大陸も一応含んではいるものの、飛行技術が発達していないため、地上に生きる人間でそこへ辿り着いた者はいない。
    ※飛竜は存在しているが、彼らは大陸のある高さまで上昇することを拒む。
     東大陸と西大陸に分かれており、分断するように中央には巨大な川がある。人が住み栄える街はもちろん、険しい山岳から穏やかな平原、極寒の氷河や人跡未踏の樹海など、あらゆる姿を持つ。

     七年前に世界各地を謎の災厄が襲い、国王カイナスが崩御。息子のアルファルドが王位を継ぎ、新たな国王として国を導いている。今は比較的安定しているが、数ヶ月前から各地で魔物が活発になっており、どこか不穏な空気が漂いつつある。

     なお、年号には〝W.T.〟と〝R.W.〟が用いられており、遠い昔に女神によって制定されたものとなる。〝白昼の虚〟という現象が起こった日を境にW.T.の後の数値がゼロへ戻り、それ以前はすべてR.W.を付けて数えられる。しかし、それが何を意味しているのかを、女神は人々に一切語らなかった。

    例:本編開始時はW.T.3045となり、ここから4500年前はR.W.1455と表記される。

     一番近い白昼の虚が起こった日(約三千年前)と、破壊神についての記述がある日記の日付が一致していることから、年号の切り替わり、及び白昼の虚に破壊神が関与しているのではないか、という考えもある。

  • 浮遊大陸 アヴァルス・ゼーレ
     王都フェグダのはるか上空に存在する、その名の通り空に浮いている大陸。地上に残っている文献に詳しい記述はなく、世界を守護する者が住まう地、とだけ書かれていることが多い。地上から望遠器具を通して見るとかすかに遺跡や山のようなものが見えるが、それ以上はっきりとは観察できない。算出された広さは直径125fc。
     アヴァルスはこの世界を造り出した創世神の名であることから、あの地には神がいるのではないか、と推察する学者もいる。

     常に黎明の光に包まれた七つの領域からなる大陸には、白亜の神殿や雲海の湖、星空の花畑、空中回廊など、地上とは明らかに異なる景色が見られる。それらの中には、硝子でできたような曼珠沙華やアスフォデルス、名もなき七色の花など、さまざまな植物が芽吹いている。
     地上で命を失ったものが冥界へ入るために通る地でもあり、現世と常世の境界とも言えるが暗い空気は漂っておらず、幽玄な雰囲気と幻想的な風景を併せ持った場所である。

    補足:fc=こちらの世界で言うkmに該当。よって浮遊大陸は(地上の人間が算出した広さは)直径125kmとなる。長さの単位はテム(tm)、リヤセート(rc)、セート(c)、ファセート(fc)となり、順にmm、cm、m、km。

  • 世界の種(アルトラ・ヴォルタ)
     今のヴァスタリアとなる世界を築いたのち、生命のない地にそれらが息づくよう、アヴァルスが造り出した世界の管理機構とも言えるもの。浮遊大陸にあるルディア遺跡最奥に安置されており、彼がいない今でも、ヴァスタリアを管理し続けている。
     干ばつが起きそうな場合は雨を降らすなど、世界中の生命の願いを汲み取り、均衡が保たれるようにあらゆる形で調整を行っているはずだったが……?
  • 冥界
     浮遊大陸の上、次元境界を超えた先にある世界。死した命は皆、浮遊大陸を経由する際に転生の証を受け取り、その順番が訪れるまでの間、冥界で静かに過ごすことが定められている。

     例外は魔物の魂。死んだあとは浮遊大陸へは導かれず、世界の深層にあるという深淵世界へと落とされる。そこへ落ちた魂がどうなるのかは不明。
     魔物の魂を冥界へ導くには、使徒の光魔法を用いて強制的に冥界への道を開き、正式に入ることが許されている魂と共に不安定なその道を歩いていくしかない。めったにないことではあるものの、それをやるとエーヴィ曰く「冥界の番人が不機嫌になる」のだという。

     かつては〝破壊の使徒〟が、迷える魂を導いたり冥界の番人と連絡を取り合っていたりしたが、今はエーヴィがすべてを担っている。

  • 黎昏刻(カイロスどき)
     この世界では夜から夕方を経て昼になり、朝を経てまた夜がやってくる。夜と昼の境界の時間帯はこのように呼ばれていた。最近では夕明け、朝暮れと表現する人も多い。
     また、浮遊大陸を通過する魂のための門が開かれる時刻でもある。

     誰も疑問には思わない。この世界にとって、それが最初から当たり前のことだったから。
  • 魔法
     ヴァスタリアにははるか昔から魔法が存在しており、人々の生活を支えてきた。ただし、世界に生きる大半の人々は簡易なものしか扱えず(薪に火をつける、洗ったものを乾かす、など)、階級としては初級より更に下のものとなるため、それらが魔物に効くことはない。この仕組みについて、残された太古の碑文から〝東と西の戦いでは、無慈悲な魔法が多くの命を奪った。女神と使徒はその惨状を目の当たりにして、世界から強力な魔法を消し去った〟と解読・考察されている。
     エーヴィなどは詠唱に古代語を重ね、強力なものを発動させることが可能。古代語を通して世界を満たす魔力へ己の意思を伝え、形成されたものを魔法として扱う形となる。なお、それゆえか決まった詠唱文は存在しておらず、エーヴィの場合は本人がやや忘れっぽいのもあり「一度言った詠唱文をもう一度言うことはあまりない」のだという。
     また、一部の魔法は名前が存在せず(エーヴィが扱う転移・創造、シアリィの植物操作など)、発動・使用に詠唱も伴わない。本人に元々備わっていた能力に近いが、便宜上、魔法の括りに入れている。

神話・伝承の存在
  • 創世神アヴァルス
     無の空間へ降り立ち、今のヴァスタリアとなる世界を築いた神――そのように記されている書物がほとんどだが、アヴァルスに関してはそれ以上の記述があるものがほぼ残されておらず、未だに謎が多い神として時折議論の対象となる。浮遊大陸の名が〝アヴァルス・ゼーレ〟であることから、今でもその地に住んでおり世界を見守っている、という言い伝えも存在する。

     最初の言語である古代語を人々に教えたとされているが、長い時を経た今のヴァスタリアでは失われた言語である。有志の学者による研究・解読は進められているものの、難解ゆえに実用には至っていない。ただ、響きが好まれて単語が店名などに用いられることはある。
     約百年前に書かれた物語『夜明けの空仰ぐリコリス』では、数少ない古代語の解読例である〝クライゼス〟という言葉を名にした主人公が登場。ここでは〝涙を流せない人〟という意味になっているが、これは誤訳であり、本来の意味は〝最後の希望〟となる。

  • 創造の守り人
     伝承によって記載に若干のブレがあるものの、すべて〝創造の力を有する、世界を守る者〟のことを指す。かつて女神と共に世界を破壊から救った〝二人の使徒〟のことなのではないか、という説もあるが、彼らのことが記された書物はどれも古く、正しいのかすらも判明していない。
     彼がいつから存在していたのか、真実を知る人間はいない。創世の頃からという説もあれば、天変地異の時に神が遣わせた、と唱える者もいる。
     老人であれば若者、或いは少年だとも言われており、地域によって伝わる姿はさまざま。共通しているのは男だということくらいで、人々は本人がすぐ横を歩いていても気づくことはない。

     当の本人は、地上で時折そんな議論が交わされていることを知らずにいる。今日も世界を守りつつ、聖域の一角で、巡回の中たまたま見つけて好物となった〝エビ〟の殻をむいている――かもしれない。
     また、空の大陸で気ままに竪琴を奏でており、その音色は風や星の音として地上へ届けられる、というお伽噺もある。

  • 女神フェリシア
     アヴァルスとともに世界を安定させた、と伝えられている女神。とても美しい女神だったようだが、武神と記載されている文献もあり、人々はあらゆる想像をめぐらせている。
     守り人同様、こちらもその容姿は描き手によってさまざまなものの、伝承の中に書かれていた、青い髪と黄の瞳という点は共通する。白百合の花が好きだった、ということも伝えられている。

     三千年ほど前の大災厄以降、人々の声に応じなくなってしまっており、フェリシア教の信徒たちは最後の神託が失われないように尽力している。ヴァスタリアを見捨てた愚かな神だと謗る声もあるようだが……?

  • 創造の使徒/破壊の使徒
     はるか昔、地上を二分した戦争が起こった際にアヴァルスが遣わせたと言われている二人の使徒。創造を司るほうが兄、破壊を司るほうが弟となる。女神とともに世界を守っており、時々地上世界に降りてきて、人々の生活をこっそりと助けることもあるという。
     ただし、大災厄以降に書かれた伝承には〝使徒〟の表記が一切なく、今でも存在しているのかは不明。そのため、守り人と同一視する考えも出ている。

     また、ここ数年王都で話題の劇では〝使徒は破壊神から命を懸けてヴァスタリアを救い、その果てに消滅してしまうが、新たに守り人という存在として生まれ変わる〟という物語が描かれている。英雄的な作風と伝承に濃く関わった内容であることから、観劇のための券は毎回完売になるほど人気だという。

  • 破壊神
     数千年おきに地上に現れ、世界に破壊をもたらすと言われている存在。ただ、不思議なことに世界にその傷痕らしきものは見当たらず、三千年ほど前に破壊神復活(大災厄)に遭遇したある人間が残した手記には、以下のような記述がある。

      ――世界の終わりだと思った。空が赤く染まり、大陸を覆うのではないか、と思えるほど巨大な影が僕達を黒に閉じ込めた。けど、その後、破滅は訪れなかった。真っ白な光がすべてを包んだのち、僕達は、気が付いたらいつもの見慣れた、穏やかな風景の中に立っていたのだ。恐ろしい影はどこにもなく、壊された街も元通りだ。悪い夢でも見ていたのだろうか?

     そのため、古代人が作り上げた創作なのではないか、と捉えている者もいる。なお、この白い光が世界中を包む現象は、はるか昔から〝白昼の虚〟と呼ばれ続けているらしい。
  • 守護竜
     古代からヴァスタリアの地に住まうという、三体の竜のことを指す。火の竜オーマ、風の竜カータ、地の竜ソガレと文献には書かれている。水の竜ユーラも数千年前までは存在していたものの、大災厄の中で消息不明となってしまった。また、古代の石板には五体目となる謎の竜の姿があるが、その名は彫られておらず〝根源の竜〟とだけ記されている。
     かつては破壊神のしもべとして大地を荒らしていたようだが、女神と使徒によって鎮圧され、邪な思考を断ち切る楔を埋め込まれたことで改心(伝承の中では〝魔法が効かず武器で傷を負わないため、拳で殴られた〟とあるが、真相は不明)。それ以降は守護竜として、その強大な力を用いて割り当てられた地を護っているとされている。

     カータ、ソガレは人前にはほとんど姿を見せず、秘境の奥に住む半ば伝説の存在と化しているが、オーマのみ、西大陸のナーゼス村付近の遺跡に住んでいる。人間好きなため村人との交流も行っており、一つの名物にもなりつつあるという。

2023.12.10更新