軌跡

行動理由

 ――彼はただの〝監視対象〟です。それ以上でも、それ以下でもありません。 何故そんな事を聞くのですか? 理解不能です。任務として同行してはいますが、彼に対してそういった感情は一切ありません。――からかっただけ? はあ……よく分かりません。 …

Call my name

 どこまでも真っ暗な世界に、彼は独り。 最後の記憶は、焼き付いて離れなかった。心の臓を貫いた緋の尾、止まることのない鮮血、徐々に消えてゆく視界。瞳から雫を落としながら、必死で呼びかける〝仲間〟達。痛みを通り越したそれは、流れてゆくはずだった…

Resonance Beat

 ――ただひたすらに、前へ。 その言葉は、心の傷跡にそっと染み込んでゆく。 決意を後押しする、確かな光を宿したまま。「エリオット、マキアス」 帝都ヘイムダル、バルフレイム宮前。ドライケルス像の前でマキアスとエリオットが談笑していると、久々に…

一アージュの距離の名を

※真ん中らへん薄暗い。 その少女は、自分の事を〝造られたモノ〟のように言い表す。 その少女は、自分が時折抱く感情を〝妙なモノ〟として処理している。 その少女――アルティナ・オライオンは、更地のようだった自身の心に芽生えつつあるものが存在して…

黎明はかく語りき

「このクラスは、俺を入れて四人。これで全員か」 偶然なのか、何かの縁だったのかは分からない。奇しくも同じ数字を率いる事になり、あの日々を思い返さずにはいられなかったが、今は一旦置いておくべきなのだろう。 資料を置き教壇に立つと、初対面の二人…

拝啓、十七歳の俺へ。

先日のコミックシティに無配として持っていった「閃ミュネタぶっこんだ豆本」です。そろそろいいかなと思ったので置いておきます。―――――― 拝啓、十七歳の俺へ。 おおよそ二年先の未来に、俺はいます。 伝えたい事があるので、これを書きました。未来…

それはありふれた言葉のはずなのに。

※Ⅱ終章後を少し捏造してます。『今日の午後六時に、学園の門出てこれそうか? たまたまそっちに行ける事になってな、せっかくだから顔見に行こうかと思ってよ。返事待ってるぜ』 朝起きて、ある程度支度を終えた頃に飛び込んできたメール。それは少しだけ…

Don’t say goodbye.

《-004》 迫る誘いの光。双刃剣を放って駆け出し、満身創痍だったリィンを突き飛ばして代わりに光を受け、ふわりと体が持ち上げられたかと思えば、一瞬で視界が闇に閉ざされる。意識が遠くへと運ばれる寸前、名前を呼ばれた気がしたが、それが誰のものだ…

ライノの花はまた、

 トールズ士官学院に、春がやってくる。窓を開けて大きく伸びをしたクロウは、窓枠に寄りかかってぼんやりと景色を眺め始めた。 明日に入学式を控えた校内は、新入生を迎えるために慌ただしく動いていた。主に忙しそうにしているのは生徒会の面々だ。会長の…

小話5本

基本的に捏造祭り。【01.月の光すら届かぬここで】 眠れない夜は、時々あった。そのせいで寝不足になって、翌日の授業で居眠りをして、教官からチョークが弾丸のごとく飛んできたりして制裁を受ける事も。不真面目さを装うのには一役買ってくれているから…

蒼の騎士と魔界皇子

 魔界の皇子には、側近と呼べる人物がいた。銀の髪と緋の瞳を持ち、希少な得物である双刃剣を振るうその青年は”蒼の騎士”として魔界中に名を轟かせている。 クロウ・アームブラスト。かつて光の大陸の西方にあった国の唯一の生き残りだ。彼の故郷ーージュ…