断章【B.Destination-Side.C】
封をされた心に届く。絶望の淵で為す術もなく、今はもう届かない光の水面を見上げて、深い悲しみと憤りを抱えた、声のない叫びが。 封をされた心が開く。黄昏の来訪に――悪友の危機に、呼応するかのように。「……ったく、このタイミングで思い出すとはな…
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終章【それははじまりのサイン】
思い出さない方が幸せなのだと、錠で何重にも封じられているのか。それとも、忘れてしまえばいいと抹消されているのか。 そのどちらなのかは、分からなかった。今、目の前にある干渉出来ない記憶も、目が覚めれば全部忘れている。留める事が許されないのだ…
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九章【小さくも大きなネガイ】
魔獣の中には、状態異常を引き起こす攻撃を仕掛けてくるものがいる。時間経過と共に身を蝕む火傷、自由を奪う麻痺。時に一撃で行動不能に陥ってしまったり、治してもしばらく後遺症が残るものもある。対策を立てていても、初めて訪れる地では情報不足故に、…
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八章【願いを彩る為のパレット】
「おかーさんっ、目の色みせて!」 ――幼い自分が、スケッチブックを手にして母を見上げている。すぐに夢だと理解した。失われたはずの過去の記憶の中に入り込んだ事も、思い出す。 抱えていた洗濯物を置いて、母――カーシャは微笑んだ。自分の瞳を指差し…
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七章【へし折るためにフラグはある】
黄昏――つまり日が暮れる時間が怖く感じる、と、アルティナが口にした事がある。情報局のエージェントとして任務を遂行してきた彼女が、夕暮れを怖いと言うのは少し意外だった。これも、感情が芽生えてきたが故のものなのだろうか。 日によって異なる色彩…
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六章【平穏なる刻、リーヴスの夜】
「やっほー、リィン! アーちゃんも!」 一日が終わりへと向かう刻。学院での用事を終えたリィンとアルティナが寮への道を歩いていると、駅の方から元気よく声を掛けられる。 ぶんぶんと勢いよく手を振る声の主は、薄暗くなり始めている中でもはっきりと認…
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五章【君が生まれた日】
リィンはいつの間にか、どこかの家の中に立っていた。 懐かしい声がする。懐かしい、匂いがする。それは自分のもののようで、自分のものではないような、不思議な感覚だ。『リィン』 ぼんやりと、目前の光景を彼は傍観する。 温和そうな黒髪の女性が呼ん…
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四章【一体誰に似たのだろう】
――ああ、またしても〝覚えていられない〟夢だ。 セピアがかった空間。鏡台の前に幼い自分がかれこれ十分は座っているのを、リィンはぼんやりと後ろから見つめていた。「どうしたの? ずっと鏡とにらめっこして」「ここ、きになる」 幼い自分が引っ張っ…
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三章【俺も君もまだ道半ば】
夕刻の図書室。静けさに包まれているこの場所に居ると、ここ数日の忙しなさが嘘だったのではないかと思ってしまうほどだった。 新年度特有の慌ただしさは先週に比べれば収まってきていたが、まだやるべき事は残っていた。士官学院としては異例の〝副教官〟…
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二章【君達に言っておきたい事がある】
セピア色の世界の中、リィンはどこかの家の隅に立って目の前の光景を見つめていた。 体を動かす事も、自分に触れる事も出来るが、物には触れられない。 夢なのだという事は理解したが、初めて見る場所ではなかった。見覚えのない場所のはずなのに、そう…
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一章【繰り返しはしないと決めたから】
いつもと何も変わらない朝を迎えた、はずだった。 普段よりも学院が遠く思えて、動かす足どころか体が僅かに重いと感じるのも、きっと気のせいだ――と、リィンは自分に言い聞かせて教室の扉を開けた。「リィン教官おはようございま――……って、ふらつい…
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序章【祈り望んでる事はただ、】
何も届かない。一筋の光さえも。 何もすくえない。誰かの命も、大切な刻も、手のひらをすり抜けていく。 何も守れない。無力な自分には、一つも。 何も聞こえない。――否、誘うように響く声がある。 踊れ、狂え。 染まれ、浸れ。 耳を塞いでも聞こえ…
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